玉川週末農園
八世・道孝は健康増進の一環として1937(昭和12)年に個人経営としては日本初となる
クライン・ガルテン(都市の住民がレジャーとして農業を行う貸し農園)
の玉川週末農園を開設しました。場所は現在の富士通ゼネラル体育館の横から少し丘に入ったあたり
の区画になります。
1. アサヒグラフ 記事『週末農園ー家族が揃って楽しめる都会生活ー』
玉川週末農園の様子は、昭和12年4月14日発行のアサヒグラフにも紹介されました。
表紙は亜欧一万五千キロ連続記録大飛行に『神風号』で出発する飯沼飛行士が飾っています。
記事『週末農園ー家族が揃って楽しめる都会生活ー』では、
週末農園の姿だけでなく、太平洋戦争に向かう時代背景の中で
意外にも現代の生活者との共通する一面が描かれています。
「アパート形式が生活の容器として歓迎される折になると、
生命を持つ一角の土地が恋しくなり、忘れられていた大自然に帰りたくなるのも人情であろう。
クライン・ガルテン(小農園)なる名前が、日本の都市生活者に新しい響きを
興(あた)へるやうになったのもここ数年来のことで」ある。
日本では昭和6年に、大阪市の農会が始めたのが最初で、その後、
東京市公園課が羽沢(現在の広尾辺り)の『分区種芸園』東京市農会が大泉の『市民農園』を開催しているが、
どれも相当な成果を上げている。
「神奈川県の高津町に出来た『玉川週末農園』もその一つであるが経営者の岡道孝さんという
慈恵医大卒のお若いお医者さんという点が変わっている。」敷地三千坪、収容会員は百五十名、
八坪で年13円。ちなみに当時の大卒の新入社員の月収は125円程度だそうなので、現在の物価で換算すると
大体年間18000円(月額1500円)くらいになるのでしょか。
ちなみに同雑誌内では、森永のミルクビスケットが50銭、
冷蔵庫77リットル型で330円、195リットル型で750円という広告が出てました。
玉川週末農園の「クラブハウスには浴場も付いている。「放っておいても管理者の方が色々と世話も見てくれるので無精者のお父さんでも大丈夫。」
土曜日曜には専門の園芸家が相談に応じてくれたり、子供達には保母が世話をしたり、
岡さん自身も「会員と一緒になって土いじりをやるやるかたがた、健康の相談にも応じようというのが特徴である。」
新鮮な野菜や美しい花々の類を自分の手で育て上げる楽しみも
勿論であるが一日のハイキングの終点を自分の農園に持ち、この園に集まった会員同士で土を中心とした健康的な社交クラブを
作りたいというのが岡さんの肝心のねらい所であるらしい。」
土地を借りていない会員も楽しめるよう「共同の土地があり、筍も取れれば芋も掘れる。」
それらが土地を借りていない会員のお土産にもなる。
(注、この章は昭和12年4月18日発行アサヒグラフ『週末農園ー家族が揃って楽しめる都会生活ー』より引用、又は参照)
2. 写真で見る玉川週末農園
昭和12年3月1日に撮影された写真が、会員の方々へ焼き増しして配れるように農園アルバムとして
まとめられて残っています。活き活きとした人々の姿が切り取られております。また、
一枚は南武鉄道(現在の南武線)の線路が写っています。
(編集2014年4月)
(尚、全ての写真は著作権を編集者家族が有するものであり、無断転用を禁止いたします。)