松本比呂-作詞作曲家・シンガー- エッセイ「苦手なんだな〜。あの間がね〜」

苦手なんだな~。あの間がね~

突然ですが、私はやっぱり、携帯が苦手です。
いきなり何、時代に逆行していること言ってんだ?!と思われそうですが、ええ、もう便利なのは充分承知してます。
携帯を使わない日はありませんよ。わたしゃ。
しか~し!携帯を使い初めて早8年、当初から思っていた、やっぱこれがね~という点がまだまだ改良の余地ありですな。(注:今回はi-modeは置いておいて)
何がいやかって、あの会話の時に生ずる独特の間ってやつでしょうか。

どうでもいい人と(なんて失礼な....。)どうでもいい話ならいいんですよ。多少聞き取れない言葉があっても支障はないんですから。(そうか?)
でも、例えばこちらから何かをお願いしたりする話の場合、なおかつそれが相手にとってちょっと面倒なお仕事だったりしたときにこうなるわけです。
『で~、水曜の件ですが、お願いできませんか?』
という言葉に対し、相手から約2秒後くらいに
『......。ええ.まあ....。いいですよ..。』
と返事がかえってくる。
小心者の私は《今、相手は絶対、一瞬躊躇したはずだ。だからその1秒を足してちょうど2秒かかったんだ~。てことはやっぱり嫌なのかな...。》などと深読みし、時間帯や場所によっては、これに一瞬の電波がとぎれることなんかあって、
『......。え........。です..。』
などとなったりすると、
《えっ、結局どっち?何時?どこで?》
などというあいまいな返答にビビったりして、結局おそるおそる探りをいれたりすることになるのです。

逆に、どうもリズム感が会わないというか言葉を発するタイミングが会わない人もいて、なんどもお互い同時に言葉を発し、なんちゃって同時通訳状態ができ、相手は心の中で『人の話を聞いてからしゃべれっちゅ-の』なんて思ってるんじゃないの~?!という、本来どうでもいいことに神経を使うのです。

こんな調子で、この『間』を時として難しく感じる私としては、用件が大事になるほど普通の電話で話したいと痛切に思うのです。
相手の微妙な声の変化で、状況を察知するという長年(?)の経験で、やっと培ってきた芸当が、携帯では、とんと役にたたなくなるのだから。
それに、聞きづらいという点でつい自分の声が大きくなるというのもほんと困り者だ。
私の声は人より高く、興奮したり声を張り上げてくると、あぶないアニメキャラのような声になってしまう。
だから極力人と話すときは心の中で《はい、トーンダウン、トーンダウン..。》と言い聞かせて落ち着いた交渉もできようものを、これが携帯だと、見事に私のアニメ声ぶりをデフォルメした周波数で完全に妙な意味でのタダモンではない声を伝えてしまうのである。
古い知り合いならまだしも、知りあったばかりの人と真面目にお仕事の話をしたくてもこれでは説得力も何もあったもんではない。
しかしみなさん、かなりの人が携帯に連絡くださいとくる。ふ~。

ちょっと昔、恋人と携帯でばかり話していたときに、どうもいつもより返事の間が長いな~と感じていたら案の上、心変りをされていた。(いや、毎回、毎回振られてるって訳じゃ.......)
く~っ、普通の電話なら絶対声の変化で早い段階でわかるから、何か手が打てたかもしれないのに~と歯ぎしりして、わけのわからない憤りを携帯にぶつけていた。
後日、~お互いの私物をどうする?~と、またまた携帯で悲しい相談をしたときに、私は何も考えずに非常に沈んだ声でポツポツと応対していたのだが、その時、相手が
『なんか、きょうの声、いいな。落ち着いてて。いつも甲高いし、アニメっぽいからさ、なんか本気で話してんの、こいつ?って思ってたんだけど。いいよ、きょう。うん。』
などと、言うではないか。
《まったく、別れ話してんのに、何いってんの?あんた。それも気楽な高い声だしてからに..。》
とムッとした私は、思いきり間をあけて、小さな声で
『.......。それじゃ.....。...だから。』
と、ちゃんと自家製電波途切れ状態もつくり、携帯を切ったのである。
切り際の彼の『えっ?何?何て言った?ちょっと..。○○.』(残念なことにこの○○は聞き取れなかった。待ってだったらフフフかも..。とこの期に及んでまだちょっと未練たらしく考える浅羽かな私ではあった)を聞けて、少しだけ気がすんだのである。

とにかく、このときはじめて携帯を使いこなせたような気がした秋の夜更けでした。

written by Hiro Matsumoto in 2002.03 (esssay No.02)

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