筆舌につくしがたき、音の良さ!

以上で簡単な修理は終わった。早速バックグラウンドミュージックとして仕事中、昼、夜、朝と連続してかけつづけた。

朝はモーツアルト、昼はロック、ポップス、夜はジャズと別にあらたまって聞くのではなく流しつづけ、聞いた。

結果は、非常にすばらしい音だ。ボリュームレベル60以上が特によい。

まずあまり疲れない。決して高音が甘いわけではなく音に膨らみがあり、細かい音ひとつひとつが頭の芯に入っていくような音がする。 演奏者の感情までが表現というか、音圧の中に再現されてくるのだ。羽田氏はブラシの星フルような音が聞こえてくるような表現を使っていたがピアニストの演奏中の「うめき声」がよく聞こえてくるのだ。またボーカルでは声帯の少しの「かすれ」のような音までもが頭の中に残る。それでいてつかれない。

音の広がりは大型スピーカー(ウーハー、スコーカー、ツイーターをもったもの)には及ばないが結構低音から高い音までをカバーしているようだ。

もっと早くこのラジオに出会えばよかった。と思わせるなにかがある。これでこのCDを聞けばよかったと思わせる喜びふつふつと湧き上がるなにかをもっている。

それはなぜかと思いはじめまたこのWAVERADIOを分析したくなってきた。時間が無いため数値的分析はしないが、思うところ、想像するところをつらつらと書いた。

まず私が正直に、商品から受けた第一印象は小さいということ、それにしては重いということ。プラスチック成型は家電メーカーのものに比べ表面仕上げの質はそれほどではないが、欧米の仕事特有の飽きない重厚さがあることであった。デザインは何気ないが、結構シンプルで飽きない永遠の輝きをもっている。

実は重いというのは中心に10センチ角以上のトランスがどっしりと鎮座していることが第一の要因であるが、電源供給をしっかり行いパワーをスピーカーのパワーにリニアに反映するような思想がありそうである。またそれ同時にスピーカーの磁性体の重さもあるかもしれない。軽薄短小ではそれなりの音しかでないのかもしれない。

スピーカーは左右のスピーカーの再生音域が違いそうだ(詳しく調べたわけではないが)向かって左側のスピーカーは低音への伸びがあるようだ。スピーカーのボイスコイルのストロークが比較的大きい。それにくらべ右側は軽く高音に伸びているタイプのスピーカーのようである。

つまり周波数特性が左右非対称音なわけである。原音空間忠実な再生というステレオ本来の仕様を削除すると面白い味付けができるようである。

このあたりにノウハウがあるのかもしれない。

さらに左のスピーカーの180度位相の違う音波が60数センチの共鳴管をとおり右へ抜けて一部が右スピーカーの脇に出る。

ラジオを作ったりすると自作であれば最初はスピーカーは剥き出しであるから、私なんぞは、トイレットペーパーの筒やら、雨どいの切れ端とか、ダンボールの箱で共鳴箱をつくったりすると結構よい音になったりする。

電話機の送話口のマイクは昔は、カーボンの粉が入っている時代があったが、(次の時代はダイナミックマイクだったが、最後にはコストのため圧電素子やコンデンサーマイクになった。)その手前の容積は送受話話周波数特性に影響を与えていた。

そんな実験でも有効性は察することができるが、ベストの効果を論理的に検証するのは多少の学問的努力が必要である。

またスピーカーが扇状に外を向いているのも、面白い点である。大型スピーカーでは人の耳を向いた方向に左右の焦点を合わせるが逆に空間に拡散させることにより広がりを作っているのか?

また管の中を通過する時間は左右アンバランスである少しの遅れが逆に音のふくらみを作るのかもしれない。昔BBDという遅延素子を使ったことがある。電価をバケツリレーではこぶICだが、遅れが長いとエコーがかかる。ただ60センチでは数ミリセカンドである。しかしそれを人は聞き分けるのかもしれない。

忠実に左右を対称に再現することを考えなければ、創造的よい音が作れるのではという気がする.逆にいえばBOSEの設計担当者は音を再現する機械から、音を創造する機械へと設計思想を昇華させてここまできたのかもしれない。このデザインの隅々の創造を数万円で手にできることは本当に私は安いと思っている。

真中に鎮座しているのが不相応なトランスの大きさ、ただエネルギー供給の無いところにはパワーは生まれない。エネルギー保存の法則を満たした率直なデザインだ。
音が通過してくる管の中は一体成型になっているために見ることができないが流れている方向はわかる。
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