別府温泉狂騒曲「喜劇地獄めぐり」


2002年2月10日 夜の部、新橋演舞場

 鈴木治彦氏(TVコメンテーター&キャスター)

 いやァ面白いのなんの。序幕からカーテンコール迄、笑って笑って泣いて泣いて……と云うのが演舞場2月の「喜劇地獄めぐり」だ。
 今や演舞場のドル箱になった「浅草パラダイスシリーズ」大ヒットのパワーを受けついでの新登場だが、舞台が浅草から別府温泉へ変わり、登場人物も全く一新とはいえ、作者と役者は全部同じと聞いて(そんなに泥鰌(どじょう)は居るかいな)と正直な所、心配半分で出かけた次第。ところがどうだ、そんな不安は物の見事に吹っとんだ。「浅パラシリーズ」第一作の初演の出来に匹敵する程の面白さなのである。
 客席も凄い。一階も二階席も、後ろの方迄ビッシリ客で埋まり、その満員の客席が役者のセリフや一挙手一投足に反応して、時にはワーッと場内が揺れんばかりの笑い声をあげたり、時には逆にしんみりしてそっと涙を拭ったり……。
 今回の作品は昭和初期に実在した別府温泉観光の生みの親、油屋熊八をモデルにした黒酢屋彦八(勘九郎、扮)と相棒の文士六平(柄本明)、宿を営む腹違いの三姉妹の三女梅子(勘九郎とは平成の名コンビ、の藤山直美)の三人が軸になっての人情喜劇だが、他に波乃久里子(長女)、渡辺えり子(二女)、笹野高史(番頭)、でんでん(やくざ)、中村獅童(三下)、寺島しのぶ(四女?)……。等々海千山千の役者達がバッチリからんで、これでもかこれでもかと目一杯突っ込んだ芝居を見せる上、永久保一男、青柳喜伊子ほか新派のベテラン、若手、更には小山三、助五郎以下の中村屋一門迄、適材適所の役で活躍してるんだから面白くならないわけがない。松竹の芝居なのに「宝塚レビュー」の場面があったり、勘九郎のアドリブに「雪印」だの「宗男」だのがポンポン飛び出すのもご愛嬌。
 兎に角、芝居が好きで好きでたまらない役者達の「地獄めぐり」の成功で、次回作は、大詰の台詞にある如く「上海」を舞台にしたら……など、今後への夢が更に大きくふくらんだ。
 


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