恐るべし!ことわざ その1
ことわざって軽~い気持ちでとらえてたけどかなり深いこといってるな~(^^b)
ある昼下がりの晴れた午後。
にも関わらず、私はとても悲しい気持ちでベランダの窓を全開にして、ベランダと窓の境に腰かけ、ぼんやりと空を見ていた。
お気に入りのミントアイステイーを横におき、BGMは久々に聞く小田和正のCD。
「秋の気配」が流れてきたあたりで自分の人生は何と薄っぺらなものだとスイッチが入り、涙があふれてきた。
止めどなく溢れ出る涙、こみあげる感情。そして曲はいよいよ「言葉にできない」に変わり、今まさに、これほどの悲しい思いがあるだろうかとクライマックスをむかえて、私はウエ、ウエと号泣しだし、いよいよサビのらーらーらとともに泣きの絶頂に差し掛かったときである。
耳元を何か異様な音が通り抜けた。
それはあまり聞きなれないがぞわーっとするもので、思わず振り返るとなんと巨大な蜂が部屋を飛び回っていたのである!
何の蜂かはわからないがミツバチよりは明らかに大きい。
そしてうっかり部屋の中にはいって唖然としている私にむかって蜂が向かってきたのである。
そうだ!蜂は黒いものを刺すんだと思った瞬間私は血の気がひいた。
そう。黒いTシャツの黒い髪の(まあやや茶系ですが、、、)泣いている美女(嘘です)。
その姿を蜂がねらうのも無理はない。私はひゃあと変な叫び声をあげながらあわてて椅子にかけていた洗いたてのタオルケットを頭から被り逃げまくった。
もう泣いている場合ではない。まさに「泣きっ面に蜂」である。これで刺されたら本当にシャレにならない!
何度も向かってくる蜂から逃げ惑いながらとにかくタオルケットお化けに変身した私はあちらこちらを走り回っていた。
蜂は勝手に飛んでくれてればいいのに何故か攻撃的にむかってきた。
「言葉にできない」はちょうど最後の大サビ<今!あなたにあ~えて~!>と小田さんが高らかに歌い上げていた。
いや、会いたくないって!蜂よ、何で会いにきたんだ~!と心の中で叫んでいた。
一瞬の隙をねらって私はベランダへ猛ダッシュした。
窓越しに見てると蜂はしばらく部屋を飛び回ったあといきなりベランダに向かってきて私をひとビビリさせたあと、さーっと外に飛んでいってしまった。
そのとき気のせいだとは思うが、「泣いてばっかりいたら刺しちゃうよん」という声がきこえた気がした。
まさに不幸は不幸をよぶ現象を真近で見せられたようだった。
蜂が去った部屋にはタオルケットをかぶり汗だくになってハアハアしている自分といつの間にか蹴ったのだろうか、無残にも倒れたコップから床にこぼれたミントアイステイー。
BGMは小田和正。気がつけばいつのまにか曲は「キラキラ」が流れていた。
その間抜けな状況に思わず笑ってしまった。
さっきまでの悲しい気持ちが消えてしまった。涙はいつのまにか汗に代わっていた。
まさしく「笑うかどには福きたる」状況に近づいた。 まったく、ことわざはあなどれない...。
written by Hiro Matsumoto in 2006.11 (esssay No.06)